「なんで覚えてないんですか?昨日の事ですよ?」まさか冗談だろうという聞き方で半分笑っていたようにも思えたが、
「同僚か自分、どっちがその仕事をやっていたのか思い出せない」と僕が言うと彼はそれまで豊かだった感情が無くなってしまった。
ブレーカーが落ちるみたいに。晴天に雷なんて落ちるわけないですよ、と言いたげな例え話。
少しの合間、会話の空白、昨日の記憶。呼び起こそうとしても僕が仕事をしていたのか、同僚が仕事をしていたのか全く思い出せない。
記憶の欠落も来るところまで来てしまった、と悲しむ気持ちすら忘れてしまった僕は忘れている事を忘れられないまま帰路につく。
フロントディレイラーとチェーンの悲鳴を聞きながら。
71.7キロ。それでも。お腹の肉が太々しい。